クロスボーダーM&A 完全ガイド DD費用・期間・進め方 【2026年版】

DUE DILIGENCE SERIES DDの費用・期間・進め方 見積りが決まる要素と依頼前の準備 2026年版 GGA Cross-Border M&A Advisory

2026年10月20日 公開 | 読了時間 約12分 | 執筆:Kazuya Sakurai(日本公認会計士) | 監修:GGAクロスボーダーM&Aアドバイザリー部門

「海外企業のDDを頼みたいが、費用の相場感が分からない」 「基本合意からクロージングまでのスケジュールに、DDをどう組み込めばよいか」 「見積りを取る前に、何を準備しておけばよいのか」
海外M&Aのデューデリジェンス(DD)は、国内案件に比べて費用も期間も読みにくいものです。本記事では、東南アジアを中心に財務・税務DDを手がけるGGAの公認会計士が、DD費用を左右する要素、標準的なスケジュール、依頼前の準備、アドバイザーの選び方を、依頼する側の立場から整理します。

本記事の内容は、弊社が所属するGPCグループ(株式会社グローバル・パートナーズ・コンサルティング)が関東経済産業局の委託を受けて実施した「中堅・中小企業のための海外M&A事例集(2026年版)」における企業ヒアリングや現地専門家への取材で得られた知見を一部反映しています。


1. 海外DDの費用はどう決まるのか

DDの報酬は、ほとんどの場合「必要な作業時間 × 担当者の単価」で見積もられます。つまり費用を決めているのは、作業時間を増減させる要素です。見積りを比較する際は、金額だけでなく、次の7つの前提がそろっているかを確認してください。

費用を左右する要素影響の仕方
① 対象会社の規模売上・取引量・勘定科目の数が多いほど、分析と検証の作業量が増えます。
② 拠点・子会社の数対象国が複数にまたがると、国ごとに会計基準・税制の確認が必要になり、現地専門家の関与も増えます。
③ DDの種類財務のみか、税務・法務・人事・ビジネスまで含めるか。種類ごとに専門家が異なります。
④ 対象期間直近2期か3期か、期中の月次まで見るか。期間が長いほど作業量は増えます。
⑤ 資料の整備状況最も読みにくく、最も影響が大きい要素です。帳簿が一本化されていない、月次決算がない、資料が現地語のみ、といった場合は作業時間が大きく増えます。
⑥ 報告書の言語と形式日本語・英語の併記、取締役会向けの要約資料の要否など。
⑦ スケジュール短期間での対応が必要な場合は、担当者を増員するため費用が上がります。

一般的な相場としては、重要論点に絞った小規模なDDであれば数百万円程度から、複数国・複数拠点を対象とするフルスコープDD(主要な領域を網羅的に調べるDD)では数千万円規模になることもあります。ただし上記の要素で大きく振れるため、相場の金額だけで予算を決めるのではなく、想定する調査範囲を伝えて見積りを取ることをおすすめします。


2. DDの種類とスコープの選び方

すべての案件で、すべての分野のDDを網羅的に実施する必要はありません。対象会社のリスクがどこにあるかに合わせてスコープ(調査範囲)を決めることで、費用対効果は大きく変わります。

DDの種類主な確認事項特に重要になるケース
財務DD正常収益力、ネットデット、運転資本、事業計画ほぼすべての案件
税務DD過去の申告・納付、源泉税、移転価格、優遇税制株式取得の案件、関連当事者取引が多い会社
法務DD契約、許認可、外資規制、訴訟、知的財産外資規制業種、許認可が必要な事業
人事DDキーパーソン、労務リスク、退職給付人材が価値の源泉となる会社(IT・サービス業)
ビジネスDD市場、競争環境、顧客、事業計画の実現性新規事業・新市場への参入

予算が限られる場合の考え方は、レッドフラッグDD・セルサイドDD編で解説しています。


3. 標準スケジュール:依頼から報告まで

標準的な財務・税務DDは、資料がそろってから4〜6週間程度が目安です。実務上は、DDそのものよりも資料がそろうまでの時間がスケジュールを左右します。

  1. 事前相談・見積り(1週間程度)対象会社の概要と想定する調査範囲を共有し、見積りと作業計画を受け取ります。秘密保持契約(NDA)を締結します。
  2. 資料依頼・データルーム開設(1〜2週間)アドバイザーが資料依頼リストを作成し、売り手側がデータルーム(資料を共有するオンライン上の保管場所)に資料を格納します。
  3. 分析・Q&A・マネジメントインタビュー(2〜4週間)資料分析、質問リストでのやり取り(Q&A)、経理責任者・経営者へのヒアリング(マネジメントインタビュー)を行います。
  4. 中間報告(作業開始から2〜3週間目)重要な発見事項を先行して共有し、交渉方針や追加調査の要否を判断します。
  5. 最終報告(作業開始から4〜6週間目)報告書を提出し、報告会で内容を説明します。
  6. 価格交渉・最終契約への反映DD結果をもとに、価格調整や契約条項を検討します。

スケジュールが遅れる典型的な原因:売り手の経理担当者が1人しかいない、資料が現地語のみで翻訳が必要、税務申告書が見当たらない、売り手がDDの必要性を理解しておらず協力が得られない、など。東南アジアのオーナー企業では珍しくないため、基本合意の段階で売り手側の協力体制と資料提出期限を合意しておくことが重要です。

調査範囲と見積りのご相談(無料)

対象会社の概要と想定スケジュールを伺い、案件規模に合った調査範囲と見積りをご提示します。NDA締結前のご相談も可能です。

見積りを依頼する →

4. 依頼前に準備しておくもの

見積りの精度を上げ、DDを短期間で終わらせるために、次の情報を事前に整理しておくとスムーズです。

見積りのために伝える情報

  • 対象会社の国・業種・おおよその売上規模・従業員数
  • 拠点・子会社の数と所在国
  • 取引形態(株式取得か事業譲渡か、取得比率)
  • 想定スケジュール(基本合意、最終契約、クロージングの目標時期)
  • 既に把握している懸念事項(帳簿の状態、税務調査、関連当事者取引など)
  • 報告書の言語と、取締役会等への報告の要否

売り手に早めに準備を依頼する資料

  • 直近3期の決算書(監査報告書を含む)と期中の月次試算表
  • 総勘定元帳、補助簿(売掛金・在庫・固定資産)
  • 直近3〜5期の税務申告書と納付の証憑、税務調査の通知・結果
  • 借入契約、保証、担保の一覧
  • 主要な顧客・仕入先との契約、関連当事者との取引一覧
  • 従業員名簿、給与・賞与・退職金の規程

5. 費用を抑えつつ品質を落とさない方法

段階的に実施するまず重要論点だけを確認するレッドフラッグDD(簡易DD)を実施し、問題がなければ詳細なDDに進む。初期段階で案件を見送る判断ができれば、それ以降の費用は発生しません。
重要性の基準を決める「○○以上の影響がある論点だけを報告する」という基準を最初に合意すると、作業量を抑え、報告書も要点に絞れます。
財務と税務を同じチームに任せる財務DDと税務DDは確認する資料の多くが共通です。別々の会社に依頼すると、重複作業と売り手への重複質問が発生します。
売り手の資料準備を早めるDDの費用と期間を最も押し上げるのは資料の不足です。資料依頼リストを早めに売り手へ渡し、提出期限を合意しておきます。

6. 海外DDのアドバイザーの選び方

確認すべき点理由
現地での実績対象国の会計慣行、税務当局の運用、帳簿の典型的な問題を知っているかどうかで、発見できる論点の深さが変わります。
日本語での報告・協議経営陣や取締役会への説明に使える日本語の報告書と、日本の会計・税務との違いを踏まえた説明が得られるか。
現地スタッフとの連携経理担当者へのヒアリングや現地語資料の確認を、現地の専門家と一体で進められるか。
価格・契約への落とし込み指摘を並べるだけでなく、価格調整・表明保証・特別補償への反映まで助言できるか。
独立性売り手側の仲介を兼ねていないか。買い手の立場で問題を指摘できる体制か。
▶ GGAアドバイザーの視点:見積りを比べるときは「前提」を比べる

複数の見積りを比べると、金額に大きな差が出ることがあります。多くの場合、その差は単価ではなく前提とする調査範囲と資料の状態の想定の違いです。安い見積りが、対象期間を短く設定していたり、税務を対象外にしていたり、資料が完全にそろっている前提になっていないかを確認してください。追加作業の扱い(どこからが追加報酬になるか)も事前に確認しておくと安心です。


7. よくある質問

Q. 海外DDの費用はどのくらいかかりますか?
対象会社の規模、拠点数、対象期間、DDの種類(財務・税務・法務・ビジネス等)、資料の整備状況、報告書の言語によって大きく変わります。重要論点に絞ったレッドフラッグDDであれば費用を抑えられ、複数国・複数拠点のフルスコープDDでは高額になります。正式な見積りは、対象会社の概要と想定する調査範囲を伺ったうえで提示するのが一般的です。
Q. 財務・税務DDにはどのくらいの期間が必要ですか?
資料が揃ってからの実作業で、レッドフラッグDDは2〜3週間程度、標準的な財務・税務DDは4〜6週間程度が目安です。資料の提出が遅れる場合や、帳簿の整備状況に問題がある場合は長くなります。
Q. DDはいつ依頼すればよいですか?
基本合意(LOI/MOU)の締結前後が一般的です。ただし、調査範囲と予算の相談は候補先が絞れた段階で始めておくと、スケジュールに余裕を持てます。
Q. 監査済みの決算書があればDDは不要ですか?
不要にはなりません。監査は決算書が会計基準に照らして適正かを確認するものであり、正常収益力や買収価格から控除すべき負債、税務リスクを買い手の視点で検証するDDとは目的が異なります。
Q. 小規模な案件でもDDを依頼できますか?
可能です。重要論点に絞ったレッドフラッグDDや、特定領域(税務のみ、運転資本のみ等)に限定したDDなど、案件規模に応じた調査範囲の設計ができます。

GGAの支援事例

本記事のテーマに関連する、GGAの支援事例をご紹介します(開示可能な事例を抜粋)。

リックソフト株式会社 ― ベトナム企業の買収支援(2026年)

リックソフト株式会社(東証グロース:4429)による、BiPlus Vietnam Software Solutions Joint Stock Company(ベトナム・ハノイ)の買収において、GPCグループ(GPC・GGA・GGV)として、企業価値算定、財務・税務・人事デューデリジェンス、買収ストラクチャーの構築を支援しました。

リックソフト株式会社 ― シンガポールInformation Officer社の株式39%取得(2026年)

リックソフト株式会社(東証グロース:4429)による、シンガポールのITコンサルティング会社Information Officer Pte. Ltd.の発行済株式39%の取得において、買手・売手双方のファイナンシャル・アドバイザーとして、シンガポール・米国を含む買収ストラクチャーの構築、財務・税務・法務デューデリジェンスとバリュエーションの調整、取締役会の投資判断の支援、株式譲渡契約書・株主間契約書の作成と交渉(日英)、クロージング手続、PMIに関する助言までを支援しました。

海外DD 実務ガイドシリーズ
関連:海外M&A 実務ガイドシリーズ(契約・ストラクチャー・会計)
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(注)本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別案件への助言ではありません。税制・規制は頻繁に改正されるため、実際の検討にあたっては最新情報をご確認のうえ専門家にご相談ください。記載内容は2026年10月時点の情報に基づきます。


Yuki Itakura

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Yuki Itakura
is a cross-border M&A advisor with extensive experience in international negotiation.


Kazuya Sakurai

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Kazuya Sakurai
is a certified Japanese CPA, professional CFO (Japan CFO Association), and UK-CMI certified sustainability (CSR) practitioner.


(注)上記記述は、その内容を弊社が保証するものではありません。詳細、最新情報は弊社までお問い合わせください。

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