【海外展示会レポート】Seafood Expo Asia 2026

Photo takn by GGA staff

高級路線シフトと中国勢の存在感~シンガポールに見るアジア水産市場の最前線~

開催日程: 2026年9月2日(水)〜4日(金)

会  場: Marina Bay Sands Convention Centre (シンガポール)

規  模: 14回目の開催、35か国から企業が参加、22の国・地域パビリオンが展開

世界35か国が参加、国際色豊かな水産商談会がシンガポールで開催

シーフード・エキスポ・アジア/シーフード・プロセッシング・アジアは2026年9月2日から4日まで、シンガポールのサンズ・エキスポ&コンベンションセンターで開催された。主催は米ダイバーシファイド社で、世界各国の水産物サプライヤーとアジア全域のバイヤーが3日間、対面で商談を行う場として位置づけられている。

今回で14回目の開催となる2026年版には、初出展の企業や、4大陸にまたがる新設の国・地域パビリオンが加わり、アジアが世界の水産物取引においてますます存在感を増していることを示す内容となった。主催者側は、政府系のイノベーションセンターから専門的な加工技術のプロバイダーまで多様な出展者が集まったこと自体が、水産サプライチェーン全体がアジアを単なる販売市場としてではなく、パートナーシップとイノベーションの戦略拠点として捉えている証しだとコメントしている。

新規参加国としてはバーレーン、ブルネイ、ラトビア、モルディブ、ミャンマー、ツバルが加わったほか、カナダ・ブリティッシュコロンビア州政府、ブルネイ水産局、済州テクノパーク(韓国)、イタリア農業・食料主権・林業省、女川町かき輸出拡大協議会(日本)、下関水産物輸出協会(日本)、シンガポール・フランス商工会議所による新たな地域・国別パビリオンが登場した。その他、オーストラリア、チリ、中国、エクアドル、フィジー、ドイツ、香港、インド、日本、キリバス、マレーシア、ニュージーランド、ノルウェー、オマーン、フィリピン、シンガポール、ソロモン諸島、韓国、スペイン、スウェーデン、台湾、トルコ、UAE、米国、ベトナム、イエメンなど、非常に多くの国・地域が参加した、まさに世界規模の商談会だった。

主催者によればアジアは世界の水産物消費の72%を占め、世界最大かつ最も成長速度の速い水産物市場とされており、今回もその需要を背景に、輸出を目指す各国生産者・商社が数多く出展していた。

圧倒的だった中国勢の存在感

会場を歩いてまず目を引いたのは、中国からの出展者の勢いだった。あちこちのブースで積極的な商談が行われており、その熱量は他国を圧倒していた。特に驚かされたのは製品の「見せ方」のクオリティの高さで、マグロ、生牡蠣、サーモンといった主力商材のディスプレイは、ぱっと見では日本産の商品と見間違うほど洗練されていた。パッケージデザインや陳列方法まで含め、かつて「安さ」で勝負していたイメージから大きく様変わりし、品質面でも高級路線を意識した売り込みが会場のいたるところで展開されていた。

韓国生産者に聞く:輸出専業、香港中心からシンガポールの高級路線ディストリビューター開拓へ

会場で話を聞いた韓国の生産者は、韓国国内市場ではなく輸出に特化した事業モデルを取っており、現在は香港向け輸出が中心だという。今回シンガポールに出展した狙いについては、消費者に直接つながるオンライン即売会などを手がけるディストリビューターとの提携を模索するためだと語っていた。取扱商材はあくまで高級路線に絞る方針で、その基準に合致する販路にターゲットを絞ってアプローチを進めていくとのことだった。

💡 GGAが注目するポイント

今回の Seafood Expo Asiaで際立ったのは、中国勢が「価格」ではなく「見せ方」で勝負するフェーズに入ったという変化です。パッケージングやディスプレイの完成度を高級路線の武器とする姿勢は、これまで品質や鮮度で優位に立ってきた日本勢にとって、ブランディング面での巻き返しが急務であることを示しています。また、韓国生産者のように輸出専業でターゲットを高級路線に絞り込み、オンライン即売型ディストリビューターとの提携を狙う動きは、限られたリソースで海外販路を築くうえで参考になる戦略です。

日本ブースから聞こえた声:初出展企業の挑戦

日本パビリオンの中で、海外展示会に初めて出展するという企業に話を聞く機会がありました。こちらは、日本で育てた牧草や野菜を乾燥させた、動物にやさしい自然由来のフードを提供するブランドです。

ブースでは、乾燥させた牧草の自然な香りがひときわ印象的で、通路を歩く来場者が思わず足を止める場面が繰り返し見られました。「どこで買えるのか」という問い合わせが相次ぎ、商談の糸口となる場面も複数ありました。ペット向けであっても、牧草の香りや見た目の自然さが来場者の関心を引くという点で、日本の自然素材へのこだわりが国際市場でも明確な訴求力を持つことを示す好例でした。

💡 GGAが注目するポイント

今回のSG Pet Festivalで観察された日本企業の初出展事例は、海外販路拡大に向けた市場調査として参加したものです。シンガポールという市場での消費者の反応を直接確かめるという目的において、展示会は非常に有効な場として機能していました。「作り手のこだわり」と「牧草・素材の本物らしさ」は、情報が溢れる現代の消費者にとって強力な差別化要素です。牧草の香りや見た目といった五感に訴える体験型展示は、展示会というリアルな場だからこそ最大限に活きる訴求方法といえます。

「見せ方」の時代へ:水産ビジネスの次の一手

Seafood Expo Asia 2026全体を通じて感じたのは、水産ビジネスにおける競争の軸が、鮮度や価格だけでなく「ブランディング」と「見せ方」へと広がっているという事実である。中国勢の洗練されたディスプレイ、韓国生産者の的を絞った輸出戦略は、いずれも自国の強みをいかに高級路線の文脈で伝えるかという課題への回答といえる。

シンガポールはアジアの水産物取引におけるハブ的な位置にあり、ここで築かれた商流や評価は、香港・中国本土・東南アジア各国への展開においても足がかりとなる。日本の水産関連企業にとっても、品質の高さを前提としたうえで、パッケージングや商談の場での見せ方を磨くことが、これからのアジア市場攻略における重要な鍵となりそうだ。

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