【海外展示会レポート】GITEX AI ASIA 2026

Photo takn by GGA staff

開催日程: 2026年4月25〜26日(12:00〜21:00)

会  場: New Bahru School Hall(46 Kim Yam Road, Singapore)  

主  催: Sool Cellar(韓国クラフト酒の輸入・流通専門事業者)

入  場: チケット制(入場料にテイスティング込み) 

規  模: シンガポール初上陸の第1回イベント

中東最大のテックイベントが、アジアに上陸

「GITEX(ジャイテックス)」という名を聞いたことがあるだろうか。1981年にドバイで産声を上げ、今や世界最大のテック・AIイベントネットワークへと成長したGITEX GLOBALのアジア版として、2025年に初めてシンガポールで開催されたのが「GITEX AI ASIA」だ。その第2回となる2026年版が、2026年4月9〜10日にMarina Bay Sandsで開催された。

初回(2025年版)は432名以上のスピーカー、110カ国以上からのテック関係者を集め、「SWITCHとは異なるグローバル視点のテックイベント」としてシンガポールのイノベーションエコシステムに新たな風を吹き込んだ。第2回の今年は、AI・量子技術・サイバーセキュリティ・ヘルステック・データセンターの5分野を軸に、世界110カ国以上から幅広い参加者が集った。

アジアは今、AIと量子技術の「変曲点」にある

GITEX AI ASIA 2026の開催背景として押さえておきたいのが、アジア太平洋地域のAI投資の急加速だ。IDCの調査によれば、アジア太平洋のAI関連支出は2026年に780億USドル(約12兆円)に達する見込みであり、ヘルスケア・金融・公共サービスを中心に企業・政府双方のAI導入が急速に進んでいる。

インフラ面でも変化は顕著だ。シンガポール・マレーシア・インドネシアは世界最大規模のデータセンタークラスターを擁し、2030年までに世界のデータセンター容量の40%を担う見込みとなっている。さらにシンガポールは世界の半導体生産の約15%を担う半導体の一大産地であり、2026年3月にはQuantum(量子)研究開発センターが新設された。AIと量子技術の収れんが産業レベルで現実のものとなりつつある今、GITEX AI ASIAはその「転換点」を象徴するイベントとして位置づけられています。

6つの専門プラットフォームが集結—展示会の構成

GITEX AI ASIA 2026の特徴は、単一の展示会ではなく複数の専門プラットフォームを一つの会場に集約した「展示会群」として設計されている点だ。以下の6つのコロケーションプラットフォームが同時開催された。

AI EVERYTHING SINGAPORE—応用AI・企業実装・実世界ユースケースに特化した中核プラットフォーム。STARTUPS NORTH STAR ASIA—アジア最大級のスタートアップ・投資家マッチングイベント。GITEX DIGI HEALTH & BIOTECH—ヘルステックとバイオテクノロジーの未来を探る場。GLOBAL DATA CENTRES ASIA—AI成長を支えるデータセンター・エネルギー・インフラに焦点。GISEC ASIA——サイバーセキュリティの最前線。GITEX QUANTUM EXPO ASIA—量子コンピューティング・量子暗号の産業応用を議論する専門ステージ。

この6分野が同一会場に集まることで、「AIを実装したい企業」「インフラを提供したい企業」「セキュリティを担保したい企業」「投資機会を探す投資家」が一度に出会えるエコシステムが形成されており、展示会ビジネスとしての設計の巧みさが際立っています。

登壇者が語る—AIとガバナンスの課題

今回のGITEX AI ASIA 2026では、政策・産業の両面から影響力のある登壇者が名を連ねた。日本からは、安倍内閣でアベノミクスや技術主導の国家変革を主導した田村耕太郎・元参議院議員が登壇。分断する地政学的環境の中で、アジアがAIリーダーシップをどう確立するかを論じた。日本の政策立案者視点からのメッセージは、アジア全体の聴衆に大きな反響を呼んでいました。

また、東南アジア初の耐量子暗号(PQC)特許を開発したAires Applied Quantum TechnologiesのCEO Ken Lin氏は、量子技術の商業展開の速度と、信頼・ガバナンス・レジリエンスの長期的な担保の両立という難題に正面から向き合った。企業のAI・量子技術への投資を支える投資家側からは、運用資産3,500億USドルを超えるベンチャーキャピタル群が参加し、アジアのディープテックへの資本流入が加速していることを示した。

注目の展示—会場から見えてきたトレンド

展示フロアでは、AI・5G・スマートシティを統合したインフラソリューションを展開するGorilla TechnologyやEricssonが存在感を示した。EricssonのCTO Yasin Khan氏は「GITEX AI ASIAの強みは、スタートアップから大企業、アカデミア、政策立案者まで、イノベーションの連鎖全体を一つの場に集める力にある」と語り、単なる製品展示を超えたエコシステム形成の場としての価値を強調した。

また今回、ベルギー・カナダ・フィリピンなど複数の国が初めて国別パビリオンを設け、これまでの常連国であるオーストラリア・中国・ドイツ・韓国・UAEなどに加わった。国を挙げた参加という点ではSWITCHと共通するが、GITEX AI ASIAは中東・欧州・中央アジアといった地域からの参加企業を多く引き込む点で、よりグローバルな色彩が強いといえます。

筆者が現地で感じたこと

初日から会場は多くの来場者で活況を呈しており、AI関連の最新技術への関心の高さが肌で感じられました。技術展示に見入る参加者、名刺を交わすビジネスパーソン、スタートアップのピッチに聞き入る投資家—会場全体に張り詰めた熱気があり、単なる見本市にとどまらない「ビジネスが動く場所」としての雰囲気が際立っていました。

テーマ面では、ライフスタイル・サステナビリティ・ヘルスケアといったトピックを掲げるブースが目立ちました。「AIの社会実装」という文脈において、純粋な技術展示よりも「人々の生活をどう変えるか」という実用的な視点が前面に出ている印象です。ヘルスケア分野では、患者データの活用やリハビリ支援のAIツール、ウェアラブルデバイスとの連携など、実証段階を超えて商用化が進む事例が多く見られました。サステナビリティ分野では、エネルギー効率の高いAIインフラや再生可能エネルギーとデータセンターの融合というテーマが繰り返し登場し、産業界のグリーン転換への本気度が感じられました。

国別の存在感という点では、筆者の印象としてインド・シンガポールのブースが特に目を引きました。インドは政府主導のデジタル化戦略を背景に幅広い産業のAI応用事例を披露し、シンガポールはお膝元らしく官民連携のスマートシティソリューションが充実していました。日本のブースも出展していたものの、規模・連携度・プレゼンスの面でこれら2カ国との差は明らかでした。

各社のAIソリューションを横断的に見渡して感じたのは、「利便性・正確性・汎用性」という三つの軸をいかに同時に高めるかという競争が、全社共通の命題になっているということです。使いやすいインターフェースや自動化による利便性の追求、精度の高い推論・翻訳・診断による正確性の担保、そして特定業種にとどまらず幅広い産業に適用できる汎用性——この三要素をいかにバランスよく実現するかが、AIプロダクトの競争優位を決定づけています。言い換えれば、「誰でも使えて、信頼でき、どこでも活きる」AIが市場の標準となりつつあり、各社はその実現に向けて互いを意識しながら技術開発を加速させています。日本企業がこの競争に本格参入するにあたっても、この三軸を基準に自社の強みを再定義することが、グローバル市場での訴求力を高める第一歩となるでしょう。

日系企業にとってのGITEX AI ASIAの意義

SWITCHがシンガポール政府主導のスタートアップ育成イベントとしての色彩が強いのに対し、GITEX AI ASIAは中東・欧州・アジアを横断するグローバルなテックビジネスのクロスロードとして機能しています。ドバイのGITEX GLOBALに参加する世界的テック企業が、アジア市場参入のために同イベントを活用するという新たな流れも生まれつつあります。

日本企業にとって、GITEX AI ASIAはシンガポールを起点にAI・量子・サイバーセキュリティ分野でのグローバルパートナーを発掘できる絶好の場です。フィリピン・ベルギー・カナダが国別パビリオンを設けた今年の動向は、日本もいよいよ組織的な参加を検討すべき段階に来ていることを示唆しています。展示会支援・商談設定の観点からも、GGAが今後も注目し続けていくイベントの一つです。

GGA展示会支援サービスのご案内 

Global Gateway Advisors Pte Ltd.では、展示会支援・市場調査支援を行っております。16年にわたる日系企業様の海外進出支援の経験やネットワークを駆使して、単なるイベントに終わらせず、その後のディストリビューターとのマッチング、販路開拓まで包括的に支援が可能です。ご興味のある方は、是非一度ご連絡ください。 

【主なサービス内容】

●  ピッチ資料のブラッシュアップ 

●  ロールプレイ・メンタリング 

●  ビジネスマッチングの機会創出 

●  現地展示サポート 

●  出展後のフォローアップ支援 

弊社ではお客様の状況に応じて柔軟にご対応いたします。 

► 初回面談30分は無料です。お気軽にお問い合わせください

次へ
次へ

【海外展示会レポート】Korean Craft Collective 2026