PER(株価収益率)とは?意味・計算式・事例・PBRとの違いまでわかりやすく解説 

PER(株価収益率)は、企業の収益力と株価のバランスを見るうえで、株式投資における基本中の基本となる指標です。この指標を理解することで、企業が市場からどのように評価されているかを把握し、投資判断に役立てることができます。 日本では「PER」という呼び方が一般的ですが、海外では「P/E」や「P/E Ratio」と表記され、“ピー・イー・レシオ”と呼ばれます。米国や欧州の投資家との共通言語としても活用される指標です。 

本指標は、株式投資の際にはもちろんのこと、海外企業の買収(クロスボーダーM&A)の検討の際にも活用可能です。 

PERの基本と計算式 

PERとは「Price Earnings Ratio」の略で、日本語では「株価収益率」と呼ばれます。企業の株価が1株あたり純利益(EPS)の何倍で評価されているかを示す指標であり、投資家が株価の妥当性を判断する材料として用いられます。 

PER(株価収益率)は次の式で求められます: 

PER = 株価 ÷ EPS(1株あたり純利益) 

具体例①:安定企業A社 

株価:1,500円 
EPS:150円 
⇒ PER = 1,500 ÷ 150 = 10倍 
→ 市場平均と同等で妥当な評価とされる。 

具体例②:成長期待が高いB社 

株価:3,000円 
EPS:100円 
⇒ PER = 3,000 ÷ 100 = 30倍 
→ 将来の高い成長が期待されていると考えられる。 

具体例③:割安に見えるC社 

株価:800円 
EPS:200円 
⇒ PER = 800 ÷ 200 = 4倍 
→ 一見割安だが、業績や将来性に懸念がある可能性。 

PERでわかること 

PERを活用することで、「企業が稼ぎ出す利益によって、投資した金額を回収するのに何年かかるのか」を見積もることができます。 

たとえば、株価が1,500円、発行済株式数が10万株、当期純利益が1,000万円の企業があるとします。この場合、PERは15倍となり、M&Aの観点で考えると、買収に投じた資金を15年かけて回収するイメージになります。 

PERが機能しないケース 

PERは、企業が赤字の場合に計算不能になります(EPSがマイナス)。たとえばD社が赤字でEPS=-50円、株価が500円だとしても、PERは算出できず、意味を持ちません。 

また、新興企業で一時的に利益が大きく変動する場合なども、PERが実態を反映していない可能性があるため、単独では判断材料としづらくなります。 

PERの目安と投資判断への活用 

PERがどの程度であれば割安か割高かの判断材料となるかは、業種や市場の状況によっても異なります。一般的には以下のように目安が語られます: 

・5倍以下:割安。ただし、業績や成長性に不安がある場合も。 
・10〜15倍:市場平均とされ、適正水準。 
・20倍以上:成長性への期待が高い銘柄。 

PERが高い場合、それは市場からの成長期待が大きいことを示します。一方で、PERが低い場合は割安と評価される一方で、市場からの注目度が低い、または将来の成長が期待できないと判断されている可能性もあります。 

PER(株価収益率)の評価基準は業種ごとに大きく異なります。これは、業種ごとに利益成長のペースやビジネスモデルの安定性、資本の使い方が異なるためです。 

たとえば、将来の成長性が期待されるITやバイオなどの成長産業ではPERが高くなりやすい一方で、インフラ系や公益事業などの安定業種ではPERは低くなる傾向があります。そのため、PERを読み解く際には「業界ごとの平均水準と比較する」ことが非常に重要です。 

PERとPBR(株価純資産倍率)の違い 

PERとよく混同される指標にPBR(株価純資産倍率)がありますが、評価の観点が異なります。PERが利益に基づいて評価するのに対し、PBRは企業の純資産(BPS)を基準に評価します。 

指標      評価基準     主な関心軸 

PER      企業の利益     収益力・成長性 

PBR      企業の資産    資産価値・安定性 

PERとROE(自己資本利益率)の関係 

ROE(自己資本利益率)は企業の資本をどれだけ効率よく使って利益を上げているかを示す指標で、PERと組み合わせて分析されることが多いです。ROEが高く、PERが低い企業は、利益を効率的に生み出しながらも市場で割安に評価されている可能性があります。 

PERを使う際の注意点 

PERは便利な指標ですが、万能ではありません。赤字企業の場合、EPSがマイナスとなりPERが計算できなくなります。また、一時的な業績変動でPERが大きく動く場合もあるため、単一の数値で判断するのではなく、PBRやROEなどの指標と併用することが重要です。 

投資判断におけるPERの活用ステップ 

1. EPSを確認する(決算資料などから) 
2. 株価を用いてPERを計算 
3. 業種平均や過去データと比較 
4. 他の財務指標(PBR・ROE)と合わせて多角的に評価 

まとめ 

PERは、株価と企業の利益のバランスを評価するうえで非常に重要な指標です。そのシンプルな計算式ゆえに初心者にも扱いやすく、また他の指標と併用することで、より精度の高い投資判断が可能となります。グローバルに通用する考え方ですので、クロスボーダーの投資やM&Aの際にも活用できるでしょう。 


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